アンケートを作る機会がある方へ
アンケートって、つい設問の内容に意識が向きがちですが、
「どの回答形式を使うか」でも、得られるデータがかなり変わります。
今日は私が意識している小さな工夫をひとつだけ紹介します。
マーケティングリサーチの現場でもよく使われている実用的なものです。
よくあるパターンとその落とし穴
例えば、駅前のビルにカフェがオープンしたとします。
1ヶ月経った頃、「お客さまはどうやってうちの店を知ってくれたんだろう?」ということを知るために、
来店してくれたお客さまを対象に、下記のようなアンケートを作りました。
Q. このお店を知ったきっかけは何ですか?(1つだけお選びください)
お店のInstagram/店のホームページ/食べログ・ぐるなび/チラシ/知人の紹介/店舗の前を通ったことがあった
こう聞くと、多くの人が「店舗の前を通ったことがあった」を選びそうです。
駅前という好立地なので「こんな店があるんだな」と視界に入っていた、ということですね。
それは確かに間違いではないのですが、この聞き方だと
- 「Instagramの投稿って意味ないのかな…」
- 「口コミで広がってる気がしたけど、『知人の紹介』が少ないから気のせいだった?」
と、ちょっと混乱してしまう可能性があります。
実際は、
「入りにくそうな店だなと思ってお店の名前で調べたらInstagramが出てきた。意外と店内の雰囲気がよさそうだったので来てみた」
「実際に店の前を通ったことでお店を知ったけど、今日は友達に誘われて一緒に来た」
など、複数のきっかけが重なって来店に至ることも多いんですよね。
ところが、選べる選択肢を「一つだけ」にすると、この辺りの複雑さが切り捨てられて、
「店の前を通って知った」と極端に単純化されてしまいます。
「すべてお選びください」→「ひとつだけお選びください」のすすめ
そこでおすすめしたいのが、この2段階パターンです。
Q1. このお店を知ったきっかけは何ですか?(すべてお選びください)
お店のInstagram/店のホームページ/食べログ・ぐるなび/チラシ/知人の紹介/店舗の前を通ったことがあった
Q2. その中で「来店しよう」と思った決め手は何ですか?(1つだけお選びください)
この設計にすると、
- Q1:認知経路&店が発信した情報がどのくらいの人に届いていたか
- Q2:行動決定の要因は何か
という3つのデータが手に入ります。
この形にしておけば、
「意外と〇〇〇って見てもらえないんだな~」とか、
「こんなにInstagramを見てくれてるなら、Instagramでお店の投稿をしてくれた人にドリンク1杯サービスしようかな」とか、
どこに力を入れるべきかが見えてくると思います。
なぜこの形式が効くのか
人の行動は1つの要因だけで決まることは意外となくて、
「いろんなきっかけの積み重ね」の中で、どこかで決定のスイッチが入る感じなんですよね。
なので、まず「すべてお選びください」で広く拾ってから、「ひとつだけお選びください」で絞る。
これだけでも、自分たちがやった取り組みの中で、
何が響いたか?
何がうまく行かなかったか?
が見えてきます。
こんな場面にも応用できます
この形式はいろんな場面で使えます。
- 広告効果測定:
「見た広告はどれ?」→「その中で印象に残ったのは?」 - 商品検討プロセス:
「検討した商品は?」→「最終的に選んだのは?」 - 満足度調査:
「良かった点は?」→「一番よかった点は?」
特に施策の効果を測りたいときや、購買理由の優先度を探るときにはかなり使えます。
まとめ:「すべて→ひとつだけ」のひと手間で、見えるものが変わる
アンケートの作成は、今回「どの形式で聞くか」という例のように、
小さなコツの積み重ねで結果の解像度が変わります。
アンケートを作るとき、「すべて→ひとつだけ」の形式で聞けるところはないかな?と
確認するこの1ステップだけでも、データの見え方はずいぶん変わります。
次にアンケートを作るとき、ちょっと思い出してもらえると嬉しいです。
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